今まさにつくられようとしている星まわりの構造をJWSTが捉えた

11月19日

 

 

 

図1 ( C ) NASA, ESA, CSA, and STScI, J. DePasquale (STScI), CC BY-SA3.0 IGO

ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡(JWST)の近赤外線観測装置(NIRCam)によって捉えられたL1527分子雲にある原始星まわりの塵やガスの構造。原始星から噴き出すジェットによってくぼみができて、くぼみの中身はすかすかになる。オレンジ色は塵が富んでいるところ、青色は塵が比較的少ない場所を示す。砂時計のような形をしているが砂時計左上のライン、右下のラインはまっすぐに伸び、左下と右上のラインはカーブしていることがわかる。また砂時計の上側においてバブル構造をしているが、これは散発的に星から噴き出すガスの影響によってできる構造である。

 

 

 NASA/ESA/CSAは16日、ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡(以下JWST)の近赤外線観測装置(NIRCam・ニアカム)によって捉えられた、L1527と呼ばれる分子雲内の原始星まわりのガスや塵の構造を示した画像を公開した(図1)。L1527は地球から約450光年離れた場所にあるおうし座分子雲内に存在し、近赤外線観測によってのみ、その姿を捉えることが可能である。まるで燃え上がる砂時計のような形をしていることがわかる。砂時計の真ん中の黒い線は原始星円盤を示しており、私達が住む太陽系と同じくらいの大きさをしている。今回の観測結果は私達が住む太陽系や太陽が最初にどのような姿をしていたかを理解するうえで重要な結果であるとしている。

 

 図1をみると、直接原始星の姿を捉えることはできないが、原始星から噴き出すガスや塵の構造をしっかりと見ることができる。原始星自体は砂時計の真ん中の黒い線の中心にある。この黒い線は原始星円盤を示し、その中心において原始星が隠れている。また原始星から噴き出すガスや塵の構造がオレンジ色や青色で表現されている。青色の部分は塵が少ない部分を示し、オレンジ色の部分では塵が豊富にあることを示している。

 

 またJWSTは、原始星がガスや塵などをジェットで放出したときの衝撃が加えられた水素分子でできたフィラメント構造を捉えることにも成功した。原始星のジェットによる衝撃や乱流は新たな星形成をすることを妨げることになり、原始星が多くの物質を蓄えることになると考えられている。

 

 L1527分子雲は10万歳と比較的若く、その年齢と遠赤外線による観測データから、原始星が作られ始めてから初期の段階にあると考えられている。L1527の形は球状の形をしているが、まだ小さく、不安定な形をしており、太陽質量の20~40%ほどの質量しか持たない。このようなL1527分子雲はまわりから物質を集め始めて、中心部が圧縮されて水素による核融合が安定的になり、図1に示したような原始星とそのまわりにあるガスや塵の構造となる。原始星まわりに物質が落ち込んでくるとスパイラル構造となり、原始星円盤ができあがり、この原始星円盤が原始星に物質を供給する。このようにして原始星が多くの質量を得ていき、圧縮されることで核融合反応が安定的になり、星が作られると考えられている。

 

 図1の砂時計の真ん中の黒いラインは原始星円盤を示しているが、この大きさは我々が住む太陽系と同じくらいの大きさである。原始星円盤形成の段階においてこんなにも多くの物質がよってきて塊を形成するのは珍しいことであるとしている。今回の観測結果は我々が住む太陽系と太陽が最初にどのような姿をしていたのかを理解するうえで重要なものであるとしている。