110億年前の詳細な超新星の姿を発見

11月23日

 

 

 

 

図1 ( C ) NASA, ESA, STScI, Wenlei Chen (UMN), Patrick Kelly (UMN), Hubble Frontier Fields.

一番左の図はAbell 370銀河団の姿。ハッブル宇宙望遠鏡による観測データを重力レンズ効果を用いて解析した結果、この銀河団左上の四角く囲った部分で、3つの超新星(大質量星の重力崩壊に伴って爆発して明るく輝き出す天体)が発見された(図A~D)。Bはハッブル宇宙望遠鏡が2010年に捉えた3つの超新星。Aは2011年~2016年までの観測データ、CはBからAの光を引いた図。DはCのカラーイメージである。青い光は温度が高く、赤い光は温度が低い状態にあり、それぞれ異なる進化段階にあることがわかる。

 

 Wenlei Chen(ミネソタ大学)氏を中心とする国際研究グループは9日、ハッブル宇宙望遠鏡によって観測されたAbell 370銀河団近傍におけるデータを解析した結果、110億年前に発生した3つの超新星(大質量星の重力崩壊に伴う爆発によって明るく輝く天体)の詳細な姿を捉えることに成功したと発表した(図1)。Abell 370銀河団の強大な重力によって、背景にある天体から発せられる光が重力レンズ効果によって増光されたり、曲げられたりする現象が発生するが、今回はこの重力レンズ効果を用いることで超新星が観測された。初期宇宙で超新星の詳細な姿が映し出されたのは今回が初めてである。今回の研究成果は初期宇宙において星や銀河がどのようにして形成されたのかを理解する上で重要であるとしている。

 

 重力レンズ効果はアインシュタインの一般相対性理論によって予想された現象であり、レンズ天体と呼ばれる強大な重力が存在するときに、その背景からやってくる光がレンズ天体によって曲げられたり、増光されたりする現象のことである。また超新星は、大質量星や中質量の近接連星が起こす大爆発により突然明るく輝きだす天体のことである。夜空でそれまで星の見えなかった所に突然明るく輝く星は新星と呼ばれているが、新星のなかで特別に明るいものが「超新星」と分類されるようになった。その後の研究で超新星は恒星全体が爆発する現象であることがわかっている。またIa型超新星と呼ばれる天体以外の大体の超新星は、大質量星の重力崩壊に伴って爆発したものであると考えられている。

 

 今回研究チームは、ハッブル宇宙望遠鏡が2010年12月~2016年に観測したデータを用いて超新星を発見した。Abell 370天体がレンズ天体となり、この強大な重力によって3つの超新星から発せられる光が曲げられ、増光される現象が確認された。またそれぞれの超新星の光の軌道の長さが異なっており、色も異なるからそれぞれ別の進化段階を歩んでいることが予想されるとしている(図1)。図1のDにおいて青色をしている超新星は、温度が高いことを示しており、時間がたって冷えてくると赤い色となる。

 

 また研究チームは超新星を起こす星のサイズを測ることにも成功した。超新星の光の強さや冷却率を観測することでサイズを測定したが、今回研究チームが発見した超新星は全て赤色巨星であり、そのサイズが太陽半径の約500倍であることが判明した。

 

 研究チームは今後も初期宇宙における超新星を観測すべく、ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡による観測を予定している。