Kepler-138太陽系外惑星に見出された「水の世界」

12月17日

 

 

 

図1 ( C ) NASA, ESA, L. Hustak (STScI)

Kepler-138太陽系外惑星系のイメージ図。明るく輝く赤色矮星Kepler-138のまわりを3個の惑星が公転している。右側にある惑星がKepler-138 d、一番左側にある惑星がKepler-138 c 主星の前面を通る惑星がKepler-138 bである。今回c 、dの2つの惑星がほとんど水で構成された惑星であることが判明した。

 

 モントリオール大学(カナダ)のCaroline Piaulet氏を中心とする国際研究チームは15日、ハッブル宇宙望遠鏡とスピッツアー望遠鏡によって観測された、地球からこと座方向およそ218光年離れた赤色矮星・Kepler-138を含む太陽系外惑星系のデータを解析した結果、この惑星系のうち2個の惑星がほとんど水で構成されていることを見出すことに成功したと発表した。この2個の惑星はKepler-138 c Kepler-138 d(図1参照)と名付けられており、これらの惑星はこれまでに発見された太陽系外惑星とは異なる性質を示しており、ほとんど水で構成されることから「水の世界(water world)」と名付けられた。

 

 Kepler-138太陽系外惑星系は2014年にNASAのケプラー宇宙望遠鏡で発見され、3個の惑星がトランジット法(惑星が主星の前を通過する際に光が減光するのを検知する方法)によって発見された。

 

 研究チームはKepler-138太陽系外惑星系の大気の性質を調べるべく、2つの惑星Kepler-138 c 、Kepler-138dをハッブル宇宙望遠鏡とスピッツアー望遠鏡を用いて追観測することとした。2014~2016年に観測が行われ、今回これらのデータを解析することとした。その結果これらの2つの惑星がほとんど水で構成されていることが判明した。しかし研究チームは直接的に水の存在を見つけたわけではない。まず、惑星形成理論における質量と大きさのモデルと比較した結果、比較的質量とサイズが大きいことが判明した。岩石型惑星ほどの質量はないけれども、水素やヘリウムで構成されるガス型惑星(例えば木星)よりは重さのある物質でできていることが判明したのである。これらのことから研究チームはKepler-138 c  、Kepler-138 dが水でできている惑星であると結論付けた。またこれらの惑星 cとdは地球のおよそ3倍の容積を持ち、2倍の質量があることが判明している。つまり地球よりは密度が低いことになる。また主星から最も近い距離にあるKepler-138 bは火星と同じ質量を持つ岩石型惑星であることが判明し、これまで発見された火星型太陽系外惑星のうち、最も小さい惑星ということになることもわかった。

 

 研究チームの主任であるBjörn Benneke氏は「これまでKepler-138まわりの惑星は地球よりも大きい岩石型惑星、いわゆるスーパーアースであると予想されていた。しかし今回の解析結果はKepler-138 cとKepler-138 dがほとんど水で構成された惑星であることを明らかにした。」と今回の解析結果についてコメントしている。これまでは地球よりも大きな惑星は岩石型惑星に違いないと考えられていたが、今回の解析結果はそうではないほとんど水だけで構成された惑星もあることを示したことについて驚いているというわけである。

 

 また研究チームはKepler-138 c、dの2つの惑星が、太陽系の外側にある衛星のうち、中心が岩石質、その周りが氷で覆われている衛星と同じ性質を持ちうるということも指摘している。たとえば木星の衛星・エウロパ、土星の衛星・エンケラドスは水が豊富にあり、表面は氷で覆われているが、これらの2つの惑星c、dは氷の表面の代わりに、水蒸気の大気を持つ惑星であると考えればよいと、研究チームは説明している。Kepler-138の惑星表面は水が沸騰するほどの温度があり、水蒸気に覆われている確率が高い。しかしもし大気圧が大きければ水として存在する可能性もあるが、そのところは今のところよくわかっていない。

 

 ちなみに今回のハッブル宇宙望遠鏡とスピッツアー望遠鏡による追観測によって、第4の太陽系外惑星Kepler-138 eも発見されている。このKepler-138 eは他の3つの惑星よりも比較的小さいが、軌道周期が38日であり、ハビタブルゾーンにあると考えられている。主星からの光が強すぎでも弱すぎでもなく、液体の水が存在できるほどの適温であるともされている。しかしこのKepler-138 eはトランジット法による主星の減光が確認されていないため、惑星としての正式な認識はまだなされていない。

 

 今後ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡によってKepler-138太陽系外惑星系の観測が行われる予定であり、Kepler-138 c、dの大気がどのようにして構成されているかが解明されることが期待されている。