VISTA宇宙望遠鏡が捉えたSh2-54星雲の背景にある無数の星たち

1月9日

 

 

 

図1 ( C ) ESO/VVVX

パラナル天文台(チリ)にあるVISTA宇宙望遠鏡の近赤外線観測装置が捉えた、Sh2-54星雲(かすかなオレンジ色)の背景にある無数の星たち。

 

 ESO(ヨーロッパ南天天文台)は4日、パラナル天文台(チリ)に設置されたVISTA宇宙望遠鏡の近赤外線観測装置が捉えた、Sh2-54星雲の背景にある無数の星の姿(図1)の写真を公開した。Sh2-54星雲はかすかなオレンジ色で示された箇所にあり、背景にある無数の星たちの赤外線が、星雲を突き抜けて観測されている様子がわかる。今回の観測データによって、この星雲において星がどのようにして形成・進化してきたかを理解することにつながることが期待されるとしている。

 

 星雲はガスや塵などの雲で構成されており、星が生まれる場所であると考えられている。SH2-54星雲はへび座方向約6,000光年に位置しており、へび座の尾の部分にある。へび座の尾の部分には他にもわし星雲とオメガ星雲が存在するが、これまでにこれらの星雲の背景にある星たちの姿は捉えられていなかった。なお、Sh2-54のShは、1950年代に300もの星雲をカタログ化したアメリカの天文学者、スチュワート・シャープレス氏に由来する。

 

 星雲の背景にある星たちは通常我々の目から見ることができない。それは星から発せられる可視光線が星雲のダストに吸収されてしまうからである。しかし星から発せられる赤外線は星雲を突き抜けることができるため、赤外線観測を行えば、星雲背景にある星たちを容易に観測することが可能である。

 

 今回、パラナル天文台(チリ)に設置されたVISTA(Visible and Infrared Survey Telescope for astronomy)宇宙望遠鏡の近赤外線観測装置によってSh2-54星雲背景にある無数の星たちが観測された。これらの星たちがSh2-54星雲内でどのようにして生まれて、成長してきたかを研究する上で重要な観測成果であるとしている。VISTA宇宙望遠鏡は今後も天の川銀河にある隠された星たちの姿を捉えるべく、観測を続けていく予定である。