JWSTが棒状渦巻銀河に潜む泡構造を捉えた

2月18日

 

 

 

図1 ( C ) NASA, ESA, CSA, and J. Lee (NOIRLab), A. Pagan (STScI).

ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡(以下JWST)によって捉えられたNGC1433の姿。NGC1433は地球から非常に近いところにあるセイファート銀河(*注1)であり、棒状渦巻構造を持つ。今回のJWSTによって銀河中心に二重のリング構造があることが判明した。青色は7.7マイクロメートル、緑色は10マイクロメートルと11.3マイクロメートル、赤色は21マイクローメートルの波長の光がある場所を示す(以下の写真でも同じ)。

 

 

 

図2 ( C ) NASA, ESA, CSA, and J. Lee (NOIRLab), A. Pagan (STScI).

JWSTによって撮影されたNGC7496の姿。つる座方向約2400万光年の場所に位置する棒状渦巻銀河である。中心には超巨大ブラックホールからなる活動銀河核があり、ジェットを噴き出している。JWSTのデータを解析したところ、NGC7496において若い星からなる星団の候補を60個ほど発見したとしている。

 

 

図3 ( C ) NASA, ESA, CSA, and J. Lee (NOIRLab), A. Pagan (STScI).

NGC1365は地球から約5600万光年離れた場所に位置し、天の川銀河の2倍ほどの大きさを持つ。JWSTの観測データを解析することで、星やガスの形成によってそれらの軌道がどのように変化するかを捉えることが可能であるとしている。またこれらの軌道の結果から、NGC1365の渦巻腕の外側にある比較的古い星からなる星団がどのようにしてできるかの理解につなげることができる。

 

 NASA/ESA/CSAは16日、ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡(以下JWST)の中間赤外線観測装置・MIRIによって撮影された、天の川銀河近傍にある複数の棒状渦巻銀河の写真を公開した(図1、2、3)。渦巻腕に沿ってところどころに大きな泡構造がみられることがわかる。近傍銀河を高精度に捉えることができるJWSTを用いて、その銀河の物理的特徴を理解することを目指すプログラム・PHANGSの一環として撮影された画像である。

 

 渦巻銀河の腕構造がどのような構造になっているのかは長年の間、天文学者によって研究されてきていたが、今回のようなJWSTによる高精度な観測が長年の間待ち続けられていた。

 

 PHANGSプログラムは世界中の100人以上の研究者からなるグループであり、Janice Lee氏(ジェミニ天文台主任研究員)を中心としてJWSTを用いた近傍銀河の撮影・研究を行っている。研究グループはJWSTによる観測が始まってから数か月のうちにM74、NGC7496、IC5332、NGC1365、NGC1433の渦巻銀河の姿を捉えることに成功した。

 

 図1、2、3は全てJWSTに搭載された中間赤外線観測装置・MIRIによって撮影された画像である。例えば中間赤外線の波長の中でも7.7、11.3マイクロメートルの波長帯は、多環芳香族炭化水素を検出することに役立つ。この多環芳香族炭化水素は、星や惑星の形成において重要な役割を担う物質であると考えられている。研究グループがMIRIの観測データを解析したところ、渦巻腕に沿って塵からなる空洞構造や、ガスが抜けていったような大きな泡構造が存在することが判明した。写真をみると渦巻腕に沿って泡構造をしているようなところがところどころにあることも確認できる。このような空洞は、若い星がエネルギーを放出することでできあがり、ときには若い星自身が渦巻腕に沿って移動する際に、星間物質からなるガスや塵を放出することによってできあがるとしている。

 

 PHANGSプログラムでは、過去に他の宇宙望遠鏡によって撮影された渦巻銀河をJWSTによって引き続き観測を行っていき、新たな物理的特徴の発見を目指していくとしている。

 

*注1 活動銀河核を持つ銀河の一種で、1943年にセイファート(C. Seyfert)によって発見された。明るい核と、通常の銀河とは明らかに異なるスペクトルを持つ。セイファート銀河のスペクトルは、可視光から紫外線にわたる青い連続光成分と、電離ガスのさまざまな原子やイオンからの輝線が特徴的である。