ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた3つの銀河からなる衝突銀河

2月25日

 

 

 

図1 ( C ) ESA/Hubble & NASA, M. Sun

ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた、うしかい座方向約10億光年先にある衝突銀河SDSSCGB 10189の姿。

 

 NASA/ESAは17日、ハッブル宇宙望遠鏡(以下HST)によって撮影された、うしかい座方向約10億光年先にある3つの銀河が衝突している姿の写真を公開した(図1)。3つの銀河はSDSSCGB 10189と名付けられ、現在衝突段階にあり、将来的には合併してより大きな銀河になることが予想されるとしている。また3つの銀河は重力相互作用によって衝突を起こしているが、一方の銀河が他方の銀河の渦巻構造を重力によってゆがめているところも確認できる。写真左側にはこの衝突銀河とは無縁であるかのように静かな佇まいを見せる銀河があり、背景には点のように写るたくさんの銀河が存在する。

 

 SDSSCGB 10189は星形成活動を行う銀河同士の衝突銀河であるが、このような天体はとても珍しい。この衝突銀河は50,000光年以内におさまっている。50,000光年以内というと、衝突を起こさずにお互いに距離を保って存在できそうな気がするが、物理学的には、銀河同士がとても近い距離にある。例えば天の川銀河近傍にあるアンドロメダ銀河は、今後遠い未来に天の川銀河に衝突するであろうと予測されているが、地球からおよそ250万光年離れている。これと比べると50,000光年がいかに近い距離にあるかがわかるであろう。

 

 今回撮影された写真は、宇宙における巨大銀河団の起源を理解するために撮影された写真である。このような衝突過程にある巨大銀河団は、宇宙にある銀河団の中でも特に明るく光る銀河団であるため、Brightest Cluster Galaxies 略してBCGsと名付けられている。天文学者の間では、BCGsはガスが豊富な銀河同士の衝突によって形成される巨大銀河団であると考えられている。

 

 SDSSCGB 10189は今後もHSTによる観測が続けられ、この衝突銀河の詳細な姿を捉えるとともに、どのように形成されたかの情報がもたらされることが期待されている。