JWSTが捉えたウォルフ-ライエ星・WR124の姿

3月18日

 

 

 

図1 ( C ) NASA, ESA, CSA, STScI, Webb ERO Production Team.

ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡によって撮影されたウォルフ・ライエ星・WR124の姿。や座方向約15000光年ほどのところに位置する。真ん中に回折スパイクが印象的な巨大星があり、そのまわりにおたまじゃくしのような形をした星雲が広がる。近赤外線観測装置(NIRCam)が真ん中の巨大星の姿を映し出し、中間赤外線観測装置(MIRI)が星雲の姿を映し出している。写真は合成画像であり、赤い光は4.44、4.7、12.8、18マイクロメートルの光に対応し、緑色の光は2.1、3.35、11.3マイクロメートル、青い光は0.9、1.5、7.7マイクロメートルの光に対応している。

 

 NASA/ESA/CSAは14日、ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡(以下JWST)の近赤外線観測装置(NIRCam)、中間赤外線観測装置(MIRI)によって撮影されたウォルフ-ライエ星・WR124の姿を公開した(図1)。これまでに他の宇宙望遠鏡によって撮影されたものよりも、高精度な画像を撮影することに成功した。画像をみると、ガスや塵でできた星雲の構造がどのようになっているのか鮮明に映し出されていることがわかる。真ん中には回折スパイクが印象的な巨大星があり、そのまわりには、おたまじゃくしのような形をする星雲の広がりが写っている。おたまじゃくしの尾の部分は茶色く写っているが、これは恒星風を表している。

 

 巨大星は死を迎えるときに超新星爆発現象(スーパーノヴァ)を起こすが、その前にガスや塵の放出を行って外層部分が脱がされた状態となり、ガスや塵で構成された丸い輪のような姿となる。このような死を迎える際の星はとても明るく輝いており、ウォルフ-ライエ星と呼ばれる。ウォルフ-ライエ星から放出される塵は、初期宇宙や地球の生命体にも含まれている重元素で構成されているため、ウォルフ-ライエ星に含まれる塵を研究することで宇宙の始まりを理解することができるかもしれないと、宇宙天文学者の間では注目の的となっている。

 

 しかし巨大星は星の生涯が短く、超新星を起こす前にすべての星がウォルフ-ライエ星となるわけではないため、観測することがとても難しく、ウォルフ-ライエ星の詳細な姿を捉える宇宙望遠鏡の開発が待たれていた。

 

 今回観測されたウォルフ-ライエ星・WR124は太陽質量の30倍ほどの質量があり、太陽10個分の元素をもたらすと考えられている。ウォルフ-ライエ星から放出されたガスや塵が移動して冷えると、JWSTでも観測可能なガスや塵でできた輪のような形となる。図1真ん中の星周りの複雑な構造をしたものがガスや塵で構成された星雲であるが、よくみるとおたまじゃくしのような形をしており、おたまじゃくしの尾の部分は恒星風を表している。このような星雲は中心星から10光年ほどの範囲に広がっている。星雲の構造を調べることで星がどれくらいの質量を流出したかを調べることが可能であるとしている。さらに今回の観測によってWR124まわりの塵がWR124を形成する上で必要な塵の量を満たしているかどうかを検証することも可能であるとしている。

 

 ウォルフ-ライエ星周りのガスや塵だけでなく、超新星を起こした後に残る塵も天文学者の間では注目されている。このような塵は星や惑星形成を行う上で手助けとなり、地球上の生命に必要不可欠な分子を作る際にも役立つと考えられているためである。またWR124のようなウォルフ-ライエ星を研究することによって、宇宙初期において必要な重元素がどのようにしてもたらされたのかを理解することにもつながるとしている。