JWSTが捉えた衝突銀河の姿

4月22日

 

 

 

図1 ( C ) NASA, ESA, CSA, STScI, Alyssa Pagan (STScI).

ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡が捉えた2つの銀河が衝突・合体の過程にある銀河ARP220。へび座方向約約2億5000万光年の場所に位置する。中心部分では太陽1兆個分の光を放出しており、回折スパイクが印象的である。中心まわりには星形成領域があり、青い領域は潮汐尾によってできる物質の流れを示している。

 

 NASAは17日、ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡(以下JWST)の近赤外線観測装置(NIRCam)、中間赤外線観測装置(MIRI)によって捉えられた、2つの銀河同士が衝突、合体している姿を公開した(図1)。この衝突銀河はARP220と名付けられ、近赤外線観測で捉えるととても明るく輝く天体であり、近赤外線の波長では太陽1兆個分の光を放出している。また中心の銀河まわりには星形成領域が存在し、潮汐の尾(図1中の青い領域)も確認することに成功した。

 

 ARP220はへび座方向約2億5000万光年の場所に位置する。ARP220は最初は2つの渦巻銀河が7億年前に衝突を開始し始め、爆発的な星形成を行ったと考えられている。またARP220まわりには大きな星団が200個ほど存在し、塵の領域が5000光年ほどの長さに広がっている(天の川銀河直径の約5%)。そしてガスの量については、天の川銀河全体のガスの量が、この塵の領域に閉じ込められていると考えられている。

 

 以前の電波観測において、ARP220中の最大でも500光年ほどに広がる100個の超新星の残骸が発見されている。その後ハッブル宇宙望遠鏡によってARP220を構成する2つの銀河の中心部分を捉えることに成功した。そして銀河中心部分が1200光年ほど離れていることも確認された。

 

 今回のJWSTによる観測では、ARP220の銀河が衝突している部分において、太陽1兆個分というとてもまばゆい近赤外線の光を放出していることが確認された。あまりに光が強いため、回折スパイクが見られる。このような近赤外線でとても明るく輝く銀河はULIRGと名付けられている。ちなみに我々が住む天の川銀河の中心部分は太陽100億個分の光の放出量であるため、ARP220における光の放出量がいかにすごいことであるかがわかる。またARP220を構成する銀河の中心部分が回転運動を行っていること、銀河中心部分のまわりにある星形成領域から、近赤外線が放出されている様子が示された。そして衝突銀河のまわりにおいて銀河の重力による潮汐尾も確認されている。潮汐尾は銀河の重力によってまわりの銀河から集められてくる物質の流れを表しているが、図1中において青い領域で示されている。またARP220まわりにある有機物がやや赤みがかったオレンジ色の光で筋状に示されている。