VISTA望遠鏡が捉えた5つの星形成領域を含む星図が完成

5月13日

 

 

 

図1 ( C ) ESO/Meingast et al.

ESO(ヨーロッパ南天天文台)のVISTA望遠鏡(チリ)によって撮影されたへびつかい座にあるL1688星形成領域。カラフルに映る場所にはガスと塵の雲が存在し、その中で星が誕生している。VISIONSプログラムによって他の4つの星形成領域の姿も捉えられ、大きな星図が完成した。

 

 オーストリア・ウィーン大学のStefan Meingast氏を中心とする研究グループは11日、VISTA望遠鏡(チリ)が捉えた赤外線観測画像を用いて、地球近傍にある5つの星形成領域を含む領域の詳細な星図を作成することに成功したと発表した。過去に観測された同領域の赤外線画像100万枚以上を集めて作成された。星形成領域において、星の材料となるガスや塵から星がどのようにして誕生したのかを理解する上で重要な資料となるとしている。

 

 星はガスと塵が自己重力によって集まることで誕生すると考えられている。しかしこれまでの研究では、星がどのようにして誕生するのかは完全に理解されていない。例えばある一定のガスと塵からどれくらいの星が生まれるか、生まれた星の質量がどれくらいであるか、これらの星のうちのいくつの星が惑星を持つかなど、様々な疑問が残されたままである。

 

 研究チームはこれらの疑問を解決すべく、チリにあるVISTA望遠鏡を用いて地球近傍にある5つの星形成領域を2018年から観測してきた。VISTAに搭載されたVIRCAMでは、赤外線観測によって塵の雲によって隠されて目に見ることができない星形成の現場の様子を捉えることが可能である。これらの観測プログラムはVISIONSと呼ばれ、オリオン座、へびつかい座、カメレオン座、みなみのかんむり座、おおかみ座の星形成領域の様子が観測された。またこれらの星形成領域は地球からおよそ1500光年以内の近い場所に存在しており、研究チームはこれらの観測画像100万枚分(画像1枚のサイズは、月のサイズ3つ分)を集めて、これら5つの星形成領域の星図を5年かけて作成することに成功した。

 

 今回作成された星図には、塵の雲によって暗く映る部分、新しく生まれた星、天の川銀河の背景星などがしっかり写っている。またこれらの領域は繰り返し撮影されているため、若い星がどのように動いているかを把握することも可能である。研究チームの一人であるJoão Alves氏は「VISIONS観測プログラムによって、星形成領域にある若い星がどのように動いたか、星の熱勾配によって外側に出される塵やガスをどのようにして脱ぎ捨ててきたかを見ることができるようになった。」とコメントしている。またESAの位置天文衛星Gaiaデータと連動することによって、星の動き方の完全な理解につなげることができるとしている。

 

 VISIONSプログラムにおいては、今後稼働予定のELT望遠鏡(チリ)の観測によって、星形成領域の詳細な姿が捉えられることが期待されている。