ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた球状星団・NGC6325

5月20日

 

 

 

図1 ( C )ESA/Hubble & NASA, E. Noyola, R. Cohen

ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた、へびつかい座方向約26000光年先にある球状星団・NGC6325。

 

 NASAは19日、ハッブル宇宙望遠鏡の広視野カメラ(Wide Field Camera 3)によって撮影された、へびつかい座方向約26000光年にある球状星団・NGC6325の画像を公開した(図1)。球状星団中心に青色の星が集まり、そのまわりに赤い星がたくさんある様子がわかる。

 

 球状星団は数十万~数百万個程度の星が自己重力によって集まった天体であり、天の川銀河ではおよそ150個ほど見つかっている。全てのあらゆる銀河において球状星団が存在すると考えられており、天文学者にとっては星形成の理論を研究する上で格好の研究対象となっている。また球状星団の中の星はほぼ同時期に作られたと考えられており、主な成分が水素やヘリウムなどであることから、宇宙初期に作られた天体であるとも考えられており、星がどのように進化してきたかをたどるための研究対象ともなる。

 

 最近では球状星団の中における星の形成過程を調べるだけでなく、ブラックホールなどの隠れた天体が存在しないかどうかの研究も盛んになされている。球状星団中心にブラックホールが存在するかどうかは未解明の問題である。球状星団中心にはブラックホールがなくとも強い重力があるため、そこに星が集中していることが予想され、実際に図1のような写真を見てもそのことがわかる。しかし実際に光の強さから中心密度を調べてみると、ブラックホールがない場合の理論モデルに比べて、密度が高いことが様々な球状星団において確認されている。このことから球状星団の中心にブラックホールが存在するのではないかと予想されているが、mass segregation(質量による住み分け)と呼ばれる現象によって、質量の軽い赤い星と、質量の重い星の重力相互作用によって、中心に質量の重い星が集中するという可能性があるとも考えられている。

 

 今後はハッブル宇宙望遠鏡のWide Field Camera 3のデータ解析がさらに進められることによって、NGC6325を含む様々な球状星団の新たな画像が作り出されると共に、新たな現象が発見されることが期待されるとしている。