まるでスノーグローブのような銀河

1月4日

 

 

 

図1 ( C ) ESA/Hubble, NASA Y. Choi (NOIRLab), K. Gilbert (Space Telescope Science Institute), J. Dalcanton (Flatiron Institute and University of Washington).

ハッブル宇宙望遠鏡によって捉えられた矮小不規則銀河・UGC 8091の姿。

 

 ESAは12月20日、ハッブル宇宙望遠鏡(以下HST)によって撮影された矮小不規則銀河・UGC 8091の写真を公開した(図1)。まるでスノーグローブ(丸い入れ物に水が満たされていて、雪などを表現した物が中に入っている)のようにたくさんの星がきらきら光っている姿が印象的である。これまで撮影された写真よりもより多くの星が写っており、今回の写真ではこれまでで最も多い数百万個ほどの星が写し出されている。

 

 UGC 8091はGR 8とも呼ばれ、おとめ座方向約700万光年ほど離れた場所にある矮小不規則銀河(サイズと質量が小さい銀河であり、星が不規則に並ぶ)である。通常の渦巻銀河などは渦巻に沿って星が整然と並んでいるが、矮小不規則銀河はばらばらに星が散りばめられたような姿をしている。またUGC 8091は通常の銀河と比べて、星の数が少ないが、無秩序に散りばめられた星が相互作用によってからまった状態になっているため、銀河全体として球状を保ち、なおかつ観測にかかる程度ではあるものの、明るく輝く。ちなみにUGC 8091はおよそ10億個の星が存在すると推定されているが、我々の住む天の川銀河はおよそ1000億個もの星が存在すると推定されている。他の銀河では数兆個ほどの星が存在すると推定されるものもある。またUGC 8091のような矮小銀河は通常、近傍の大きな銀河の周りを軌道運動している。そして矮小銀河は質量が小さいために、近傍の大きな銀河に成長を妨げられる、もしくは吸収されることがある。UGC 8091の場合は近傍の大きな銀河によって歪められたと考えられている。

 

 今回公開されたUGC 8091の写真は、2006年から2021年にかけてHSTのwide field camera 3 とadvanced camera for surveyと呼ばれる装置によって得られたデータを解析した結果得られたものである。フィルターは12個ほど使われており、中間紫外線から可視光線まで幅広い波長の光が捉えられた。写真1において赤く輝く点は、励起された水素分子が放出した光であり、スターバーストによってできた星が放出したものであると考えられている。それ以外の星は古くからあるものであるとしている。またdeep-field imageと呼ばれるプログラムにおける解析の結果、UGC 8091は金属量が低く(low metalicity)、とても古くから存在する銀河であり、遠くの場所にあることが判明したとしている。

 

 今回UGC 8091の詳細な姿が捉えられ、古くから存在する銀河であることが判明したが、この研究成果が古くからある銀河と、近代的な銀河、例えば我々の住む天の川銀河にどのような進化関係があるかを紐解く上で重要であるとしている。