ハッブル宇宙望遠鏡が太陽系外惑星の移り変わる天候パターンを捉えた

1月7日

 

 

 

図1 ( C ) NASA, ESA, Q. Changeat et al., M. Zamani (ESA/Hubble).

太陽系外惑星WASP 121-bのイメージ図。

 

 Jack Skinner氏(カリフォルニア工科大学)を中心とする国際研究チームは4日、ハッブル宇宙望遠鏡(以下HST)のデータ解析から太陽系外惑星WASP 121-bの大気の特徴を捉えるとともに、複数年に渡る大気の移り変わりを捉えることに成功したと発表した。主星に向いている面とそうではない暗い面の温度差によって強力なサイクロンができたり消滅したりするパターンが確認できたとしている。他の太陽系外惑星の生物生存可能性を確かめる上で重要な研究成果となる。

 

 WASP 121-bはティロスという愛称で知られ、地球からおよそ880光年離れた場所にある太陽系外惑星である。主星から非常に近いところに存在し、地球-太陽間のおよそ2.6%の距離しか離れていない。そのためわずか30時間ほどの公転周期しかなく、表面温度が高温なウルトラホットジュピターに分類される。またWASP 121-bは常に同じ面を主星に向けており、3000Kを超える温度に上昇する。また主星の重力によって惑星の形も変形される。過去にHSTのデータから大気上層部から宇宙空間に飛び出していくマグネシウムや鉄成分も検出されている。

 

 今回研究チームは2016、2018、2019年のHSTのデータを用いて、トランジット法によるWASP 121-bの特徴を捉えることを試みた。トランジット法は太陽系外惑星が主星の前もしくは後ろを通過するときの主星の減光具合を捉えることにより、太陽系外惑星の存在と、大気の特徴を捉えることができる手法である。長い年月のデータを用いるため、季節により移り変わるWASP 121-bの大気の状態を確認することができると研究チームは判断した。

 

 その結果、WASP 121-bの大気の特徴や温度変化の様子、化学組成などを詳細に描き出すことに成功した。ホットスポットと呼ばれる一番高温な場所が、風や大気の状態によってどのように移り変わるかを特定することにも成功したとしている。また大気のパターンをモデルに組み込んだコンピュータモデルによって、このWASP 121-bを解析した結果、年月とともに移り変わる天候パターンがあることを発見した。主星に向いている面とそうではない暗い面の温度差によって強力なサイクロンができたり、消滅したりするといったことが一例としてあげられる。

 

 Jack氏は「今回のWASP 121-bの大気の状態が詳細に解析されたことによって、ウルトラホットジュピターの正確なモデルを作ることができるようになった。HSTの観測結果と併せて、時間と共に経過する天候パターンの移り変わりを理解することを目指していく」とコメントしている。またESAのQuentin Changeat氏は「地球上の天候は私達の生活にかかせないし、生命が生まれた要因でもある。太陽系外惑星の天候の特徴を理解することは、生物生存可能性を確かめることにつながる。」とコメントしている。

 

 今後のHSTの観測、また強力な望遠鏡であるJWSTが太陽系外惑星の大気の特徴を捉えることによって、長期的で安定した天候パターンが発見されることが期待されるとしている。