チャンドラ衛星が100億光年以上離れた場所のホットガスの分布を捉えた

1月13日

 

 

 

図1 ( C ) X-ray: NASA/CXC/MIT/M. Calzadilla el al.; Optical: NASA/ESA/STScI; Image Processing: NASA/CXC/SAO/N. Wolk & J. Major.

チャンドラ衛星とハッブル宇宙望遠鏡が捉えた写真のうちの4枚。紫色で示された部分にホットガスが写る。このホットガスは地球からおよそ100億光年以上離れた場所にある。

 

 Michael Caldazilla(マサチューセッツ工科大学)氏を中心とする研究グループは11日、チャンドラ衛星のX線観測装置とハッブル宇宙望遠鏡(HST)などによって95個もの銀河団を観測した結果、100億光年以上離れた場所にある膨大な星形成の基となるホットガスの分布を捉えることに成功したと発表した。図1において紫色で示された部分がチャンドラ衛星で捉えられたX線が放出される領域を示しており、そこに星形成の基となるホットガスが存在する。このホットガスが急速に冷えると冷たいガスになり、重力収縮によって星が形成されるとしている。

 

 銀河団は銀河同士が重力によって引き付けあうことで集団となったものであり、宇宙において最も大きな天体である。この銀河団にはX線で観測可能な膨大な量のホットガスを含む。銀河団の中には数百もの銀河が存在するが、この銀河の中の星の何倍ものホットガスがそれぞれの銀河に存在すると考えられている。

 

 今回研究グループはおよそ50日間にわたって、チャンドラ衛星などの望遠鏡によって遠く離れた場所(34億~99億光年離れた場所)にある95個もの銀河団を観測し、星形成がどのようにして行われるかを研究することを目標としていた。観測対象となった95個の銀河団は、宇宙において最も明るく輝く銀河団(BCGs)であり、その中心部を捉えることとした。実際に観測を行ったところ、図1のような星形成の基となるホットガスの分布が100億光年を超える場所で広がっている様子を捉えることに成功した。このホットガスの分布はここ100億年において変わらないままであるとしている。また図1にはハッブル宇宙望遠鏡によって捉えられた銀河団中の銀河も示されており、黄色やシアン色で表現されている。

 

 図1では4つの銀河団のホットガスの分布を紫色で示しているが、左上にある写真はとけい座方向約64億光年離れた場所にある銀河団(SPT-CLJ0310-4647)、右上にある写真は画架座方向約77億光年離れた場所にある銀河団(SPT-CLJ0615-5746)、左下の写真はきょしちょう座方向約39億光年離れた場所にある銀河団( SPT-CLJ0106-5943)、右下にある写真はとけい座方向約56億光年離れた場所にある銀河団(SPT-CLJ0307-6225)方向の様子を捉えたものである。またそれぞれの写真はおよそ200万光年ほどの幅がある。我々が住む天の川銀河10万光年ほどの幅であるため、これらの銀河団がいかに大きいかどうかがよくわかる。また図1において細長く伸びた銀河が映っているが、この銀河は銀河団の背景にある銀河であり、銀河団の強大な重力による重力レンズ効果によって光が歪められたものである。

 

 研究グループが観測データを解析した結果、図1に写るホットガスのエントロピー(ガス分子の不規則な運動)がある一定の値以下まで下がるとガスの温度が下がり、重力収縮によって星形成が行われることが判明した。