ハッブル宇宙望遠鏡が最も小さい太陽系外惑星で水蒸気を捉えた

1月27日

 

 

 

図1 ( C ) NASA, ESA, Leah Hustak and Ralf Crawford (STScI).

太陽系外惑星GJ 9827dのイメージ図。右上に今回水蒸気が発見されたGJ 9827dがあり、左下に主星である赤色矮星GJ 9827がある。GJ 9827dよりも内側の軌道に2つの惑星が存在する。

 

 モントリオール大学(カナダ)のPierre-Alexis Roy氏を中心とする研究グループは25日、ハッブル宇宙望遠鏡(以下HST)を用いた観測により、太陽系外惑星・GJ 9827dにおいて水蒸気を捉えることに成功したと発表した。この岩石惑星の大気がどのような多様性に富んでいるのかを理解する上で重要な観測成果であるとしている。

 

 太陽系外惑星・GJ 9827dは2017年にNASAのケプラー宇宙望遠鏡によって発見された。うお座方向約97光年離れた場所にある赤色矮星・GJ 9827のまわりをおよそ6.2日という短い時間で公転している。直径は地球のおよそ2倍あり、表面温度は金星と同じくらいの温度でセ氏425℃であるため、生物生存可能性はないとされている。このような高温下では水蒸気が存在せず、金星と同じように二酸化炭素が大気の多くを占めていると予測されていた。

 

 今回の観測は太陽系外惑星・GJ 9827dの大気成分を検出すること、特に水蒸気を捉えることを目的に観測が行われた。3年以上にわたる観測の結果、11個ものトランジットが検出され、惑星大気に水蒸気があることが判明した。トランジットとは惑星が主星の前を通過する際に起きる光の減光であり、これを検出することで大気がどのような化学成分を含んでいるかを確認することができる。もし惑星に雲があれば、その部分はほとんど主星からの光が通らず水蒸気の検出が行われやすい。研究チームの一人であるBjörn Benneke氏は「太陽系外惑星において直接大気の水蒸気を捉えたのは今回が初めてのことである。今回の観測が、今後この岩石惑星における大気の広がりや多様性を理解するのに役立つ」とコメントしている。

 

 今回の観測で太陽系外惑星において水蒸気が捉えられたが、その起源については謎が残されたままである。現在これらの謎を解くうえで2つの仮説が立てられており、1つ目は大気が水素で満ち溢れていて、そこから水が蒸発しているという説である。2つ目は水素やヘリウムに富んでいて、それが基となり、主星から吹き出す放射線によって水が蒸発しているという説である。研究チームはこれらの仮説をもとに2つの大気の状態を想定している。それは惑星・GJ 9827dの周りが海王星のように大気表面が水蒸気で覆われて、水素に富んでいる、もしくは大気温度が高い木星の衛星・エウロパのような惑星であるというものである。エウロパは地表が氷で覆われておりその地下に地球の2倍の水が存在すると考えられている。Benneke氏はこれらの仮説について「GJ 9827dは半分が水、半分が岩石でできている可能性があり、実際にそうであれば、たくさんの水蒸気が存在するであろう」とコメントしている。

 

 またもし惑星が主星から十分離れた距離にあり、空気がある程度冷たく、水が氷の状態で存在するような環境であれば大気に水が含まれることは十分想定されるとしている、GJ 9827dは主星に非常に近いところにあり、表面温度がおよそセ氏425℃あるため、そのような環境下にはない。もしこの仮定を考えるのであれば、GJ 9827dがどんどん主星に近づいていき、その過程で水素ガスが熱せられて、惑星の弱い重力に逆らって大気から水蒸気として逃げていると予想されるとしている。水蒸気の痕跡から、そもそもこの惑星が主星近くにおいて形成された可能性があるとも指摘している。

 

 今回HSTによる観測によって太陽系外惑星の水蒸気が発見されたが、現在稼働中のジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡によって追観測を行い、新たな大気の化学成分を見つけ出して、詳細な大気の様子の理解が進むことが期待されるとしている。