観測史上最も輝きを放ち、質量成長率の高いクウェーサーを発見

2月24日

 

 

 

( C ) ESO/M. Kornmesser

今回発見されたクウェーサー天体・J0529-4351のイメージ図。

 

 オーストラリア国立大学のChristian Wolf氏を中心とする研究グループは19日、オーストラリアのANU2.3メートル望遠鏡やVLT望遠鏡の観測データを解析した結果、これまでの観測史上最も明るく輝き、かつその天体から出る光量が最も大きなクウェーサー天体を発見したと発表した。このクウェーサー天体はJ0529-4351と名付けられ、地球からおよそ120億光年離れた場所にある。中心にあるブラックホールは1日に一つの太陽分の質量を得ており、これまで発見されたブラックホールの中でも質量の成長率が最も高い天体であることも判明した。今回の観測結果が超巨大ブラックホールやそのまわりにある銀河がどのようにして形成され、成長してきたかを紐解くうえで重要な成果であるとしている。

 

 クウェーサー天体は遠くにある銀河の中心部分にある明るく輝く天体であり、中心部分に超巨大ブラックホールが存在する。超巨大ブラックホールはまわりの降着円盤からガスや塵を吸収し、大量の光を放出するため、クウェーサー天体は明るく輝いて見える。地球から遠くに離れたいくつかのクウェーサー天体では、あまりにも明るく輝くため、可視光線でも観測が可能である。また一般的にはクウェーサー天体が明るく輝けば輝くほど、それだけ中心にあるブラックホールの質量成長率が高いと考えられている。

 

 今回研究チームはVLT望遠鏡による観測データの解析の前に、昨年オーストラリアにあるANU2.3メートル望遠鏡による観測データを解析して、J0529-4351がクウェーサー天体であるとの認識に至った。その後VLT望遠鏡の観測データを解析した結果、この天体が観測史上最も明るく輝き、かつその天体から出る光量が最も大きなクウェーサー天体であることを見出すことに成功した。J0529-4351は地球から120億光年離れた場所に位置する。よってこの明るく輝く天体は120億年前に存在していることになる。このクウェーサー天体の中心にある超巨大ブラックホールの質量は太陽質量の170億倍であると見積もられ、まわりにある降着円盤からガスや塵を吸収し、1日に太陽質量1個分の質量を得ていることが判明した。ガスや塵を吸収することで大量の光を放出するが、この光量は太陽光量のおよそ500兆倍にも上るとしている。なおクウェーサー天体まわりの降着円盤の直径の大きさは7光年ほどであり、太陽-海王星間の距離のおよそ15000倍の距離がある。

 

 これまでJ0529-4351・クウェーサー天体は1980年にその存在が確認されていたが、そのときはクウェーサー天体であると認識されなかった。人工衛星Gaiaのデータ解析ですら、その天体はクウェーサー天体ではなく、星であると認識されていた。

 

 今回の観測結果は、クウェーサー天体の中心にある超巨大ブラックホール、またそのまわりにある銀河がどのように形成され、進化してきたのかを紐解くうえで重要な資料となるとしている。しかしChristian Wolf氏は「個人的に超巨大ブラックホールの謎を追跡するのが好きで、子供が宝探しをするような気持でいる。今でも今まで学んできたものをテーブルに用意している」とコメントしており、超巨大ブラックホールの謎を解明する意欲が絶えない。現在チリのアタカマ砂漠に建設中のELT望遠鏡による観測でJ0529-4351の更なる特徴が捉えられることも期待されるとしている。