アルマ望遠鏡が原始星円盤内の水蒸気分布を捉えた

3月3日

 

 

 

図1 ( C ) ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)/S. Facchini et al.

アルマ望遠鏡で捉えられた原始星円盤・おうし座HLまわりの水蒸気の分布が青色で表示されている。

 

 

図2 ( C ) ALMA (ESO/NAOJ/NRAO).

アルマ望遠鏡によって捉えられた原始星円盤・おうし座HLの塵の分布。リング間の黒い部分は形成中の惑星が通過した跡である。

 

 Stefano Facchini氏(イタリア・ミラン大学)を中心とする国際研究グループは2月29日、アルマ望遠鏡を用いた観測により、惑星形成が進んでいる若い原始星円盤・おうし座HLまわりの水蒸気を捉えることに成功したと発表した(図1)。水の量は地球上の海の3倍以上あり、原始星円盤の内側に存在するとしている。特に惑星形成が進むリング状の隙間部分においては、多くの水蒸気が存在し、惑星形成に大きな影響を与えている可能性がある。

 

 原始星円盤・おうし座HLは地球からおうし座方向およそ450光年離れた場所にあり、中心星は若い太陽のような星である。その周りにはガスや塵でできた原始星円盤が存在し、塵が衝突合体を繰り返すことによる惑星形成が進んでいる。

 

 惑星形成は原始星円盤が冷たい環境にあることが条件であると考えられており、その場合、水が観測されるはずであるが、これまでに観測例がなかった。

 

 今回研究チームはアルマ望遠鏡によりおうし座HLを観測した結果、図1のような水蒸気の分布を捉えることに成功した。ボローニャ大学のLeonardo Testi氏は「地球からおよそ450光年離れた場所にある星周りの水蒸気を検知しただけでなく、水蒸気の分布を高精度にイメージ化することができたことが見事である」とコメントしている。また水蒸気は原始星円盤のリング状の隙間部分に多く存在することが判明した。この隙間はガスや塵を多く含む原始星円盤内において、原始星まわりを軌道運動する形成途中にある若い惑星が通過する際にできたものである。惑星は原始星円盤内において、物質を集めながら成長している。このことから、水蒸気が惑星を構成する化学物質に影響を与えることが考えられるとしている。

 

 ESOのElizabeth Humphreys氏は「写真を見て、水蒸気が氷のような固体微粒子から放出されているところを見たときに、とても興奮した。」とコメントしている。原始星円盤に存在する固体微粒子は惑星形成の基となり、衝突合体を繰り返しながら大きな塊となっていく。また惑星形成が、水が固体微粒子にまとわりつくような冷たい環境下にあれば、固体微粒子同士が効率的にくっつき、惑星形成が順調に進むと考えられている。Stefano Facchini氏は「今回の観測結果は水の存在が惑星系形成に大きな影響を与えることを示した」とコメントしている。

 

 今後はアルマ望遠鏡や現在建設中のELT望遠鏡が惑星形成や惑星形成における水の役割が明らかになることが期待されるとしている。またELT望遠鏡に搭載予定のMETIS(中間赤外線画像化装置及び分光装置)が原始惑星系円盤の内側部分の詳細をこれまでにない精度で捉えることが期待されるとしている。