JWSTが捉えた星形成領域・NGC604の姿

3月10日

 

 

 

図1 ( C ) NASA, ESA, CSA, STScI.

JWSTの近赤外線観測装置(NIRCam)によって捉えられた星形成領域・NGC604の姿。星雲中心から恒星風が吹き、空洞ができている様子が明確に捉えられている。

 

 

図2 ( C ) NASA, ESA, CSA, STScI.

JWSTの中間赤外線観測装置(MIRI)によって捉えられたNGC604。冷たいガスや塵が存在する場所が明確に写し出されている。

 

 NASAは9日、ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡(以下JWST)の近赤外線観測装置(NIRCam)と中間赤外線観測装置(MIRI)によって捉えられた星形成領域・NGC604の写真(図1、2)を公開した。NGC604における星の分布、星の形成過程を研究する上で重要な資料となる。

 

 NGC604は地球からおよそ273万光年離れた場所にある、さんかく座銀河・M33の中に存在する。年齢はおよそ350万年であり、1300光年ほどに伸びるガスと塵で覆われているが、この中にはB型星(*注1)やO型星(*注2)に分類される熱くて質量の多い若い星が200個ほど存在する。天の川銀河近傍銀河においてこんなにも星が集中する星形成領域はとても珍しいことであるとしている。事実、天の川銀河にはこのような星形成領域は存在しない。NGC604は若い巨大星が存在し、それらの星間の距離も近いことから、星形成間もない時期における巨大星を研究する上で、格好の材料であると研究者の間で注目を浴びている。

 

 図1はJWSTの近赤外線観測装置(NIRCam)によって捉えられた写真であるが、巻きひげのようなものや、赤く輝く塊のようなものがところどころで見られる。また星雲内の明るく輝く熱くて若い星から吹く恒星風によって、中心付近で空洞ができていることが確認でき、恒星風に含まれる紫外線が星雲周りのガスをイオン化している。イオン化された水素は図1において、青白く輝いている場所にある。またオレンジ色に輝く筋状のものは、多環芳香族炭化水素(PAHs)がある場所を表しており、星間物質や星形成、惑星形成において重要な役割を担っている。しかしこのオレンジ色の筋がどのようにしてできたかは未だ謎であるとされている。そしてこのオレンジ色の筋から離れた場所に、暗い赤色で示された場所があるが、これは冷たい水素分子があることを示しており、星形成をする上で最適な環境である。

 

 図2はJWSTの中間赤外線観測装置・MIRIによって捉えられた写真である。図1と比べて星が少ししか写っていない。これはNGC604内にある熱くて若い星の中では、中間赤外線を放出する星が少ないからである。図2に写る星々は赤色巨星と呼ばれる、太陽の直径のおよそ数百倍の大きさを持つあまり温度の高くない星であるが、これらの星はNGC604の近傍銀河に属する星々である。図2では、主に冷たいガスや塵から放出される光が写し出されている。また青い巻きひげのような物質は多環芳香族炭化水素である。

 

*注1 ハーバード分類で表面温度の系列に属する高温の星であり、表面温度は~29,000Kほど。質量は太陽の2.5倍~12倍ほどである。

 

*注2 ハーバード分類で表面温度の系列に属する最も高温の星であり、表面温度は~45,000K以上ある。質量は太陽の25倍~120倍ほどである。