ハッブル宇宙望遠鏡が捉えたジェットを噴出する原始星の姿

3月31日

 

 

 

写真1( C ) NASA, ESA, K. Stapelfeldt (NASA JPL), G. Kober (NASA/Catholic University of America).

ハッブル宇宙望遠鏡の可視光線観測によって捉えられたおうし座FS多重星系の姿。

 

 NASAは25日、ハッブル宇宙望遠鏡の可視光線観測によって新たに撮影された、ジェットを噴出する原始星を含む多重星系、おうし座FSの写真を公開した(写真1)。写真右上にあるおうし座FS Bから青い線で示されたジェットを噴出する様子が明確に示されている。赤外線観測によるジェットの観測はこれまで多く行われているが、可視光線でジェットの様子が捉えられたのはとても珍しいことである。

 

 おうし座FSは写真1真ん中付近で輝くおうし座FS Aと、その右上で部分的に塵からなる垂直な黒い線で覆われた星、おうし座FS Bからなる多重星系であり、おうし座・ぎょしゃ座方向約450光年離れた場所にあるおうし座・ぎょしゃ座星形成領域にある。この2つの主要な星まわりにおいてガスや塵からなる若い天体が散らばっている。この多重星系は年齢が280万年であり、比較的若い星系である。

 

 おうし座FS Bは新しくできた星・原始星であり、まわりにはガスや塵からなる原始星円盤ができている。写真1で垂直な黒い線で示されているものが原始星円盤である。原始星円盤にある塵が集結して新たな惑星が出来上がると考えられている。またおうし座FS BはTタウリ型星(*注1)として分類される若い変光星に分類される。写真1の通り、おうし座FS Bからは青色で示されたように、非軸対称なジェットの噴出が起きており、この過程でエネルギーの高いイオン化された物質が外部に放出されている。このジェットが周りの星雲と衝突すると斑点状の発光現象が起き、その部分はハービッグ-ハロー天体と呼ばれる。青い線が途中で途切れているのは分子雲で隠されているためである。

 

 おうし座FS AはTタウリ型星の連星系である。

 

*注1 可視光でも観測される若い星のことであり、前主系列星の一種。スペクトルにHα線などの輝線が見られる。原始星が進化して、周りのガスが少なくなった状態の星であり、内部構造において対流が卓越していると考えられる。中心での水素の核融合反応はまだ始まっておらず、重力収縮に伴う重力エネルギーを解放することで輝いている。