ハッブル宇宙望遠鏡によって捉えられた矮小銀河・IC 776の姿

5月4日

 

 

 

写真1 ( C ) ESA/Hubble & NASA, M. Sun.

ハッブル宇宙望遠鏡が捉えたおとめ座銀河団中の矮小銀河・IC 776。

 

 ESAは4月29日、ハッブル宇宙望遠鏡(以下HST)によって撮影された矮小銀河・IC 776の姿を公開した。明るく輝く星形成領域がところどころに見受けられつつ、銀河円盤が不規則な形をしている様子がわかる。

 

 IC 776はおとめ座方向約1億光年先にあるおとめ座銀河団のうちの1つの銀河である。この銀河はドゥ・ボークルール分類におけるSAB型(棒渦巻銀河)に分類されるが、SAB型の中でも棒状構造があまり発達していない弱い棒渦巻銀河に分類される。とある研究によれば、複雑な構造を持つ銀河として分類される。写真1を見てみれば、その複雑さは明らかだろう。銀河円盤が渦を巻いておらず不規則な形をしており、明るく輝く星形成領域も円盤上にあるというよりも、ばらばらに存在することが見て取れる。

 

 今回公開されたIC 776の写真は、HSTによっておとめ座銀河団の矮小銀河から放たれるX線源を捉えるプログラムの過程で撮影されたものである。X線は銀河の降着円盤に物質が衝突する際に放たれると考えられている。降着円盤に衝突する物質は、降着円盤を形成する中性子星やその伴星の重力によって引き付けられている。この過程を繰り返すことによって、銀河中心に巨大ブラックホールが形成されると考えられている。またIC 776はおとめ座銀河団中を動き回っており、その過程で銀河間ガスからの圧力を受ける。この圧力によって星形成が促され、銀河中心のブラックホールへの物質供給につながる。そして降着円盤が強化され、さらに多くのX線の放射を行うと考えられている。

 

 IC 776のX線源を捉えるプログラムはHSTとチャンドラX線望遠鏡を組み合わせて行われており、X線源を可視化することに成功した。今回の研究成果によって、銀河進化の理解につながると考えられている。今後の課題は銀河の電磁場を捉えることであり、このことが更なる銀河進化の理解につながるとしている。