9月27日

 

 

 

写真1 ( C ) NASA, ESA, CSA, STScI, A. Ginsburg (University of Florida), N. Budaiev (University of Florida), T. Yoo (University of Florida). Image processing: A. Pagan (STScI).

ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡の近赤外線観測装置・NIRCamが捉えた銀河中心付近にある星形成領域・いて座B2の姿。多くの色で輝く星の姿が写し出されており、オレンジ色に輝く領域には分子雲が存在する。

 

 

写真2 ( C ) NASA, ESA, CSA, STScI, A. Ginsburg (University of Florida), N. Budaiev (University of Florida), T. Yoo (University of Florida). Image processing: A. Pagan (STScI).

ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡の中間赤外線観測装置・MIRIが捉えた、いて座B2の姿。紫色・ピンク色で輝く領域に分子雲が存在する。写真1よりも多くの分子雲の様子を捉えているが、暗く写る箇所が多い。この部分には実際にはガスや星が存在するが、分厚い雲で覆われているために、その姿が隠されていると考えられている。

 

 ESAは24日、ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡(以下JWST)によって撮影された、天の川銀河で最も質量が大きく活発に星形成が行われている領域・いて座B2領域の写真を公開した(写真1、2)。写真1は近赤外線観測装置・NIRCam、写真2は中間赤外線観測装置・MIRIによって撮影された写真である。写真1でオレンジ色に輝く領域、写真2で紫色、ピンク色に輝いている領域が星の材料となる分子雲が豊富にあることを示しており、このような明確な雲の領域が写し出されたのは、今回が初めてである。またNIRCamの写真は、MIRIの写真よりも分子雲があまり写っていないものの、多くの星が写し出されているのが印象的である。これらの2枚の写真の詳細を研究することによって、星形成過程の謎が解明されることが期待されるとしている。

 

 星形成領域・いて座B2は、天の川銀河中心にある超巨大ブラックホール・いて座 A*(エースター)から数百光年離れた場所に位置しており、星や星形成の材料となるガス、複雑な構造を持つ磁場構造が密に存在する。いて座B2にある星の材料の量は、天の川銀河中心部分の10%程であるが、天の川銀河中心部分で作られる星の数の半分ほどの星を今なお作り出しており、効率よく星を形成している。

 

 今回公開された写真は、JWSTの近赤外線観測装置・NIRCam、中間赤外線観測装置・MIRIによって撮影され、これらの観測装置によって分厚い雲で覆われた若い星や、これらの周りにある温かい塵を観測することが可能となった。天文学者たちは、これらの観測結果が、星形成過程の謎を解き明かし、なぜ銀河中心部分付近の他の場所よりも多くの星形成が行われているのかを理解するのに重要な資料となると考えている。しかしながらいくつかの場所において、色がついておらず、暗く見える部分がある。この部分には実際には密度の高いガスや塵が存在すると考えられているが、雲があまりにも分厚く、ガスや塵、出来立ての星でまだあまり光り輝いていない星の光が観測にかからないことを意味している。

 

 また写真1と写真2を見比べると、写真1は分子雲の様子があまりはっきりと写っていないが、多くの星が写し出されている。これらの星の詳細を調べることで、星の質量や年齢を確かめることが可能であり、将来的に解析が進められることで、銀河中心部における星形成過程の謎を解き明かすことが可能であるとしている。特にこれらの星形成が数百万年という長い年月をかけて行われたのか、もしくは何か別のプロセスがあって、短い時間で多くの星ができたのかどうかが注目点であるとしている。