・武藤恭之氏(工学院大学准教授)
・テーマ:系外惑星誕生の現場を見つけよう


 宇宙にはたくさんのガス(主に水素原子)やちりがたくさん浮かんでいる。ガスが重力により集まり、ガス球である星が誕生する。そして星のまわりには、やはり重力によってガスとちりが集まり円盤ができる。この円盤を原始惑星系円盤と呼び、惑星は原始惑星系円盤の中で誕生したと考えられている。原始惑星系円盤の中にある大きさ1マイクロメートルに満たないちりが100万年以上の時間をかけて惑星にまで成長すると考えられている。

 

 コンピューターのシミュレーションにより実際にちりを集めてどんな惑星ができるかを見積もることは可能であり、星や惑星の形成シナリオを構築することができるが、実際の観測で確かめることができなければ、机上の空論でしかない。

 

 VLT望遠鏡、国立天文台のすばる望遠鏡やアルマ望遠鏡などの大型観測装置のように集光力が大きく、弱い光でも見ることができるようになり原始惑星系円盤の姿をはっきりと写真に納めることができるようになった。また高感度観測により、今までに見ることができなかった物質を見つけることも出来るようになってきている。現在はこれらのデータを整理する段階であり、原始惑星系円盤とは何か、現実的な星、惑星形成のシナリオについて大きく理解が進んでいくことが期待されている。

 

 

・宮崎聡氏(国立天文台准教授)
・テーマ:広視野天体探査で調べるダークマターの分布

 

 1929年にハッブルにより宇宙が膨張していることが発見された。現在ではこの宇宙膨張速度が速まっており、ダークエネルギーが存在していると考えられている。ダークエネルギーの存在自体は全く今のところわかっていないが、宇宙膨張の歴史を推測するためには宇宙に存在する物質の分布を調べ、宇宙膨張の割合の変化と物質分布の時間変化との関係を明らかにする必要がある。宇宙に分布する物質は光を発する物質以外に、多くのダークマターが存在していると考えられている。

 

 ダークマターとは強い重力作用により光さえも閉じ込めてしまうため、光を発しない物質のことである。宇宙の様々な観測結果を、実際に光を発する物質の質量分布から想定できる天体現象では説明ができないため、ダークマターが存在すると多くの研究者の間では信じられている。そのダークマターは光を発する物質の5倍以上あるとされている。

 

 ダークマターは重力レンズ効果により、その分布を調べることができる。重力レンズ効果とは遠くの銀河から発せられる光が重力により曲げられる現象のことである。ダークマターを中心とした円の周りに、写真で捉えることができる銀河が円の接線方向に引き伸ばされる。逆に宇宙のいたるところにダークマターがあると仮定して、その位置からみた円の接線方向に銀河がどのくらい引き伸ばされているかを数値化することもできる。接線方向にしっかりと引き伸ばされていれば+1、中心から垂直に引き伸ばされていれば-1のように数値化することできる。このようにして得られたデータから数値ごとの等高線をつくることができる。数値が高い線の中にはダークマターが存在すると考えられる。このようにしてダークマターの分布を明らかにすることが可能なのだ。

 

 このようにダークマターの分布を明らかにすることで、そこから宇宙膨張の歴史に迫ること可能である。なおダークエネルギーとダークマターの関係性はないと研究者の間では考えられているようだ。ダークエネルギーは宇宙膨張を加速させるもの、ダークマターは強い重力により天体や、物質を強く引き寄せるものであるとして別の問題として扱うようである。

 

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