球状星団NGC6397とNGC3201において新たなコンパクト天体を発見

2月5日

 

 

 パリ天体物理学研究所のEduardo Vitral氏を中心とする研究チームは3日、ESAのGaia(位置天文衛星)のデータ(Gaia EDR3)とハッブル宇宙望遠鏡のデータを解析した結果、天体中心部で重力崩壊を起こしている球状星団NGC6397と未だ重力崩壊をしていない球状星団NGC3201の中心部において、太陽質量の1000倍ほどのダークマター質量が存在していることが判明したと発表した。データの視線速度、固有運動の情報をもとにベイズ統計を用いるMAMPOSSt-PMと呼ばれるシミュレーションコードで星団内の星の動きを予測し、その結果から中心部の質量を推定した結果である。また両球状星団の速度分散構造を調べたところ、等温モデルと同じ構造をしていることが判明した。この結果は両球状星団が力学的進化を終えて、平衡状態になっていることを意味している。さらにモンテカルロシミュレーションと呼ばれるN体シミュレーションを行い、両球状星団の内部の運動を解析した結果、NGC6397には数百もの白色矮星、NGC3201には100個ほどの恒星質量ブラックホールが存在するとする予測結果を示した。2021年2月にはNGC6397内においてミニブラックホールクラスターが存在するとの研究成果が発表されていた(球状星団NGC6397の中心部に20個以上のミニブラックホールが存在の記事参照)。

 

 2022年の第2四半期にはESAからGaia DR3のデータが公開される予定となっており、更なる球状星団の詳細な姿が捉えられることが期待される。また今回の研究成果は、星団内におけるコンパクト天体の合体や、重力波の有無の確認などに役立つとしている。

 

 球状星団は数十万から数百万の星々が球状に集まった高密度天体であり、天の川銀河のハローに主に分布し、これまでに約150個ほど発見されている。星々が球状に集まるためには強力な重力が必要であるが、ブラックホールもしくは個々の星々の自己重力によって球状の天体をなしていると考えられている。しかし、本当に球状星団内にブラックホールが存在するのかどうかは未だによくわかっていない。球状星団内ではmass segregation(重い星と軽い星の住み分け)と呼ばれる、異なる質量同士の星同士による重力散乱によって軽い星がエネルギーを得て星団の外側に移動し、重い星がエネルギーを失って星団中心に沈んでいくというような面白い現象も見られる。

 

 

( C ) NASA, ESA, and T. Brown and S. Casertano (STScI) Acknowledgement: NASA, ESA, and J. Anderson (STScI)

ハッブル宇宙望遠鏡によって2004年7月から2005年6月にかけて撮影された球状星団NGC6397。水素を使い終えてもうすぐ生涯を終えようとしている青い星と、水素を燃料にしてサイズを大きくしつつある赤色巨星によって構成されている。