2. はやぶさ

 

 はやぶさは2003年から2010年まで稼動していた。2003年5月9日に鹿児島から打ち上げられたが、はやぶさには工学試験探査機としての性質があった。打ち上げ目的としては、小惑星にたどりつき、サンプルを採取することにあった。

火星と木星の間にはメインベルトと呼ばれる小惑星が集まった箇所があり、火星、木星に沿って小惑星が並んでいる。このメインベルトには72万個以上の小惑星があり、大きいものでは直径95kmあるケレス、直径55kmあるパラスがあることが知られている。この小惑星のうち地球近傍に接近する近地球型惑星としてイトカワ、リュウグウという小惑星がある。地球から月まではおよそ3億kmであるが、はやぶさはその距離の800倍にあたる距離にある”いとかわ”という小惑星にたどり着いた。

 

 いとかわにたどり着いたはやぶさは何とかいとかわに着陸した。しかしサンプル採取を行う段階で不具合が生じた。はやぶさはターゲットマーカーという光を反射するものをいとかわに落とし、その光を頼りにして管をはやぶさから降ろし、その管がいとかわの表面にたどり着くのと同時に弾丸を発射し、その反動で砕け散った表面の岩石を取り出すはずであった。しかし何らかの原因で弾丸が発射されなかった。後にわかることであるが、それでも地球に帰還した際にははやぶさがいとかわに着陸した際に飛び散った微粒子を採取することには成功していた。

 

 西山教授はイオンエンジンの研究をしているが、はやぶさが打ちあがった際にはスーパーバイザーとしてはやぶさとの通信のやり取りを担当していた。はやぶさはいとかわに着陸した際に生じた損傷の影響でキセノンガスの燃料漏れを起こしていた。そして1ヶ月通信が遮断された時期があった。そこで西山教授は何回も通信を行い、わずかに得られた情報を基にはやぶさの姿勢制御に成功し、何とか通信のやりとりが行えるようにした。はやぶさは様々な課題を成し遂げたように思えるが、このようにとても重大な事故もあり、西山教授の支えが影にはあったのである。そしてはやぶさは様々な困難を乗り越えながらも、通算で25000時間以上の宇宙動力航行をなしとげ、当時としての世界記録を樹立したのである。

 

 役目を終えたはやぶさはオーストラリアに帰還し、いとかわの微粒子サンプルが入ったカプセルを回収した。微粒子からはかんらん石、輝石等が混ざっていることがわかり、様々な情報から、いとかわはマグマ等を形成するほどの大きな惑星であったことを示唆しているという。

 

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